2020年から始まった新型コロナウイルスの影響で、世界的に戦後最悪の経済危機に直面したと言われています。今回のコロナショックでは、自然災害の時の供給面への大きな影響や世界金融危機の時の需要面への大きな影響とは違い、需要と供給の両方への影響が大きく、相互作用によって深刻な経済悪化をもたらした全く新しいタイプの経済ショックなのです。
コロナショックによる影響
経済停滞の供給面
人の移動に制限がかかり、停滞したため生産や物流が滞り、物資の不足へと繋がりました。ロックダウンにより販売業からレストランなど営業停止や営業自粛となりました。これが供給面での経済停滞です。
経済停滞の需要面
感染拡大の防止策として、国内では外出制限と自粛、国外では渡航制限などの影響で観光や宿泊、航空などを筆頭に対面などにより接点が必要となるサービスでは、今までにない規模で需要面が縮小しました。モノでは長期にわたって使用される商品の需要が激減しました。その反面オンラインでの消費やケータリングでの消費は拡大していきました。
世界的に稀に見る経済打撃
このように、感染拡大を抑制するために多くの国で感染の抑制を目的とした渡航制限や外出制限等が実施されたことに加え、国内においても人や物の交流が制限された事での経済的ショックは大きく、更には所得や雇用面にも大きな影響を与えました。米国では世界金融危機時を越え、1930年代の大恐慌時以来の失業率だと言われています。これらの影響は、経済を急速に縮小させ、危機の連鎖を生みだしてしまったのです。
世界経済は、ゼロコロナからウィズコロナへ
世界で最も安全な国・地域の番付「COVIDレジリエンス(耐性)ランキング」を出しているアメリカの大手総合情報サービス会社ブルームバーグによると、2022年の1月ランキングにおいては、経済活動を止めずにピークアウトさせたかが各国のランキングに影響を与えたとしています。
3回目のワクチン接種が進み、重症者や死者数も少数にとどまり、変異株の登場でも一貫して渡航の自由を継続してきたアラブ首長国連邦(UAE)がランキングの首位となりました。世界的には、新型コロナウイルス感染症を季節性インフルエンザ同様に扱うべきだという考えが一気に拡がっており、一時は徹底したゼロコロナ政策掲げてきたニュージーランドやシンガポールも今年に入り、経済の再開に重きを置き、ウィズコロナ政策へと移行しました。
日本の入国緩和措置
2月に入り、政府は新型コロナウイルスの水際対策において、昨年11月から外国人の入国を原則禁止していましたが、国内でのオミクロン株の蔓延状況から、3月以降に段階的に規制緩和の方針を打ち出しました。国際交流を長期にわたって遮断したことによる弊害は、経済や文化、学術など広い分野に及んでしまいました。
しかしながら、安心して受け入れられる環境を整えることができるかどうかが入国緩和への絶対条件でもあります。海外で入国制限を緩和する動きが主流になってきたのは、ワクチンの3回目接種が進んでいるのが大きな理由と言えます。日本は、ワクチン接種開始当初は遅れをとりましたが、2回目までの接種で欧米に追い付くことができました。しかしながら、3回目は大きく遅れを取っているのが事実です。そのため、結果として入国緩和措置にも影響が出てしまっているのです。現在、国内では3回目のワクチン接種が進められ、2月中に65歳以上の高齢者と医療従事者が接種を完了できるかが、入国緩和への政策転換の要となっていました。
今後の入国緩和について
2022年3月の入国緩和措置では、3回目のワクチン接種の有無に応じて、待機期間が緩和されました。また、外国人の新規入国についても受入責任者の管理の下、観光目的以外の入国を認める措置を取りました。しかしながら、観光目的での入国措置は依然として緩和されず、国内での自粛措置も依然として継続されています。今後の入国緩和を見据える上でも、国内の経済の底上げを見据える上でも、国民の3回目のワクチン接種率の推移が大きな鍵を握っていると共に、ゼロコロナからウィズコロナへの転換がさらに求められるのではないでしょうか。